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この世の中に満足している者は、少ない。
昔と比較すれば生活はしやすくなった。
だが犯罪の急増のお陰で安心もしていられないからだ。
そんな時代に自分を生んでくれた親が悪い、などと言い出す者は流石にいないが、今の世界に対する不満はやはり絶えない。
そんな不満の声に、国が反応しない訳がなかった。
今、国で行われている議会では、以下の議題が取り上げられている。
『この様な世の中で、これから先、どのようにして生きていくべきか。』
そして、それこそが今回、学校で出された課題だった。
「だるっ……」
始めにでた感想はそれだった。課題など、めんどくさい以外の何でもない。
しかも内容は、国での議会で言い争っているような高いレベルのもの。
こんな時間かかりそうで、ムズい宿題なんてやってられっかよ……。
学力があったが為に、周りから勧められ、成り行きでこの進学校に入学してしまった彼、五十土 隼斗(いかづち はやと)。
軽く立てられた髪に、整った顔立ち。世で言う“カッコいい”の部類に入る好青年だ。
“語学”の授業担当の先生は今、前に立ち隼斗を含むクラスの生徒全員にこの課題の説明をしている。
その先生に気づかれぬよう、隼斗は小さくため息を洩らしていた。
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