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この学校はどんな事があろうとも、必ず時間通りに授業が開始され、終わっていく。
「日直、号令!」
チャイムが鳴り終わる前に、図太く、妙に響く教師の声があげられた。
それに反応し、生徒は皆動かしていた腕を一斉に止め、素早く立ち上がる。
一瞬遅れて隼斗も起立した。
「……」
本当に一瞬遅れただけだったが、教師にはそれがしっかりとわかったようで、全員が立ち上がったのを確認すると、何より先に隼斗を睨み始めた。
この学校は異様なまでに礼儀等についての校則が厳しい。
起立、礼、着席、は全員の動きが一致しなかったり、動きにメリハリがなかったりすれば、やり直しを喰らう事も稀ではない。
さらに、朝、廊下でのすれ違い、帰り道、どんな状況でも教師に対しての挨拶を欠かしてはならない、という当たり前の事までわざわざ校則として制定されている。
何だよ、めんどくせぇな……。
いいからさっさと終わらせろっての……!
教師が隼斗を睨んでいることは周りもなんとなくだがわかっているようだ。
チラチラこちらを見てくる者がいる。
だが隼斗は顔色を一切変えず、それらの視線と合わない様に適当に黒板の辺りを見ておいた。
「ちッ……礼!」
結局、教師側が折れた。
しっかりと舌打ちまで聞こえてきたという事は、先生は怒っている、とアピールしたかったのだろうか。
足元に力を入れ、わざとっぽくも聞こえる足音をたてながら教師は生徒達の礼も確認せずに教室を後にした。
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