序 章

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まるで静寂な夜を覆すような 大きい叫びが辺りに響いた。   顔は潰れ、翼膜は破壊され 在るべきところに尻尾は無く   血は滝のように垂れ流し   火竜と呼ばれる飛竜は 足を引きずり その場を逃げようとした。     しかし 暗闇から放たれる弾丸から 決して逃れることはできず   すぐさま 大地に突っ伏すことになる。       当然 攻撃はそれだけではない。     ランサーが体目掛けて特攻し   双剣士がそれを支える 脚の役目を果たさせず   麻痺弾によって 動きを封じられた火竜は…   大剣の格好の餌食である。     溜めに溜めた桜色の大剣は 動かぬ火竜の頭を直撃し そのまま骨髄へ届き   そこから、どす黒い血液が 地球の重力に反して 流れ出す。   それでも 大剣士は休むことなく 攻撃を繰り出し   返り血を浴びてもなお 気にすることなく     眉間に トドメの一撃を喰らわせた。     そして そのまま火竜は本来の目的を 果たすことなく   咆哮とともに崩れ去った。     かつて城や人々を、恐怖に おののかせた火竜は   その威厳を果たすことなく   変わり果てた姿で     夜の静寂と消えた。
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