目眩

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その時、風が吹いた。 耳の奥で ゴーと鳴るような。 不意に少年が私を見た。 「甘い匂い」 少年の優しい目が 私を貫く。 今度は耳の奥で ドクドクと心臓の音がした。 今日は何故だか 頭がフワフワする。 暑い所為かしら。 少年は私から目を反らして 「よいしょ」と立ち上がって 私の方へと 歩み寄って来た。 黒い髪が 光を吸い込んで 銀色に輝いて見えた。 ハーフパンツから出ている脹ら脛は 細い割りにガッシリしていて スケボーを抱えた右腕も 下を向いて歩く少年の首筋も 日に焼けている所為か 逞しく、また 色っぽかった。
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