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「参加しようよ。私は、何もしないで死ぬなんて納得出来ないよ…」
夢は俺のシャツの袖を引っ張る。
「少し考えさせてくれ」
それから、俺と夢は家につくまで一切言葉を交わさなかった。
二人は無言で拓斗の家の前で、立ち尽くしていた。
「私、帰るね…。また、明日」
先に口を開いたのは、やはり夢の方であった。
「おぅ、またな」
俺は、歩いていく夢の後ろ姿を見送っていた。
五メートル程、離れた所で夢が振り返った。
「私、拓ちゃん…ことが…。だから、死んで欲しくない」
「何?声が小さくて聞こえねぇよ」
「ううん。何でもない。バイバイ」
夢はそう言うと走って行ってしまった。
「なんだったんだよ…」
俺は、取り敢えず家の中に入ることにした。
いつもなら、まだ仕事中の母さんが帰ってきていて、夕飯の準備をしている。
理由は聞かなくても、大体分かっていた。
「拓斗、お帰り。母さん、会社辞めてきちゃった」
母さんは明るく言ってはいるが、仕事が生き甲斐の人だったから、内心は相当落ち込んでいるはずだ。
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