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「あぁ…」
俺は、母さんにかける言葉が見つからずただ俯くだけだった。
「何、暗い顔してんのよ」
美鈴は落ち込む拓斗の背中を、叩いた。
「いってなぁ、何すんだよ!!」
「あんたが、暗い顔してからでしょうが」
「そりゃあ暗くなるに決まってるだろ。見てみろよ…」
俺はテレビを付ける。
どこのチャンネルも、さっきの総理大臣の会見の映像を流したり、惑星が衝突したときの被害の検証など、どこも同じようなことを放送していた。
「あと、一ヶ月とちょっとで皆死ぬんだぞ…」
「まだ分からないじゃない。少なくとも何人かは、生き残れるって言ってたでしょ」
「分かるって!生き残れるのはたった一握りなんだぞ。どうせ頑張ったって結局は皆死ぬんだよ!!」
母さんにこんな怒鳴り散らしたのは、久しぶりだった。
パンッー
俺の右頬に、衝撃が走る。
「ってーな!なにす…」
パンー
今度は左頬に衝撃が走った。
「何もしないうちから、簡単に死ぬなんて言わない!!あんたを育てるのに、私がどんだけ苦労したと思ってるの!!」
俺は、母さんに殴られた頬を擦っていた。
母さんに怒鳴られたのも久しぶりだった。
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