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「本当は参加しないつもりだった。前々からテレビで惑星が衝突するとかやっていたけど、まだ心のどこかできっと何とかなる、何とかしてくれると思っていたんだ」
母さんは、何も言わず俺の話を真剣に聞いている。
「だけど、昨日の首相の会見でそれが現実味を帯びてきて、急に怖くなった…。頭が真っ白になって何も考えられなくなったんだ」
「だけど、母さんに引っ叩かれて目が覚めたよ。生き残る可能性はゼロではない。たとえ可能性が1%でも、必死にもがいてみようって。そうすれば、例え駄目だったとしても悔いは残らないし、すっぱり諦められるってね」
「本当にそれでいいの?」
今まで静聴していた母さんが、俺に問いかける。
「ああ」
俺にはもう迷いはなかった。
一言力強くそう答える。
「良かった。そう言ってくれると思ってたわ。じゃあ、そこにある書類にサインして。母さんあとで、投函してくるから」
机の上には、「サトウ タクト 様 貴方は【Select】に参加しますか」と書かれた紙が置かれていた。
俺は迷わず『Yes』に丸を付けた。
そして名前の側に、人差し指の先に朱肉をつけて、拇印を押した。
書類は3枚組みになっているようで、俺は2枚目に目を通す。
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