決断

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「今日は楽しかったね」 夢が今日あった事を振り返る。 教室にはいつも通り、拓斗達以外誰もいなかった。 「ジェットコースター降りたときのアンタの顔、今思い出しても笑えるわ」 奈津は、俺の顔を見て腹を抱えて笑っている。 「拓ちゃん、高いところ苦手だもんね」 「うるせーな」 夢の言う通り、俺は高いところが大の苦手だった。 と言っても、其れには訳があって、小学生の頃に木に登ってるときに、背中から落ちたのが原因だった。 その時の傷は、今もまだ残っている。 「へー、拓斗君も苦手なものがあるんですね」 それから俺らは、大学に入学してから今までの思い出を時間を忘れて語り合った。 「あと何回、こうして集まることができるんだろうな」 不意に俺が言った一言で、場の雰囲気がガラリと変わった。 今まで、楽しそうに笑っていた三人の表情が暗くなる。 【Select】があと一週間足らずで始まることを思い出したのだった。 「そうですね。もう、この教室でこうして、話すことも出来なくなりますからね」 遂に、拓斗たちが通う大学も閉校することになったのであった。
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