890人が本棚に入れています
本棚に追加
またしても、変な空気が流れる。
「私、Selectに参加しないことに決めたから…」
突然、奈津がそんなことを口走った。
「えっ、なんだよ。いきなり…。それに参加しないって」
「あんたらは、参加するんでしょ?頑張りなさいよ」
奈津は俺と、夢の肩に手を当てる。
「そんな…。私達と一緒に逃げようよ。将人君からも何か言ってよ」
夢は助けを求めるように、将人の方を見るが、俯いたまま問い掛けには答えてくれなかった。
「将人…」
「仕方がないのよ。亜季には私しか居ないんだし。あの子、体が弱いから参加できないの。 …だからさ、私が護ってあげなきゃ」
亜季とは、奈津の妹で、幼い頃事故で両親を亡くし、今は親戚が持っているアパートで二人暮らしをしていた。
「そんな…、嫌だよ…」
夢は泣き出してしまう。
「ほら、泣かないの。ったく…」
奈津は、夢を優しく抱き締める。
「ってことは、お前も参加しないんだな…将人」
「えっ、なんでそれを…」
どうやら、図星のようだ。
「お前ら二人、付き合ってんだろ?」
将人と奈津は、俺らに隠しているつもりだろうが、見え見えだった。
いつでも、敬語の将人は奈津と二人っきりになると、普通の喋り方になるのであった。
最初のコメントを投稿しよう!