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歌を唄う詩穂の横顔、それはいつもと変わらなかった。
ただ何故だろう…もう遠くの存在の様に思えた。
「どうした?隆太、飲み過ぎか?」
歌を唄い終えて詩穂が隣に座った。
「いや…あっ、それより結婚おめでとう」
ハッと一瞬驚いて次に詩穂の視線は英則の方へ。
唄っている最中の英則は視線に気付きチラッと詩穂を見たが知らぬ顔でまた歌の世界へと入り込んで行った。
「呆れた、もう話しちゃったのか」
「ははっ…そう言うなよ、アイツも俺には話が来てると思ってたらしいよ」
「せっかく、あたしから直接言おうと思ってたのに…」
「は?何で?」
「あんたの驚く顔が見たいからに決まってるじゃない」
「なんだそりゃ…全く…お前も相当性格ひねくれてんな」
ヘヘッとまた男っぽく笑って見せる詩穂。
もう…こんなバカみたいなやり取りが出来なくなるのかもな…
コイツが結婚しちゃったら…な…
横で歌を唄う英則にちょっかいを出す詩穂を見ながら俺は何故かそんな思いにかられていた。
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