第1夜 月夜の晩に

11/16
前へ
/19ページ
次へ
 シアリスが目を覚ましたのは、完全に日は沈み、煌々と月が輝く夜だった。  ひんやりとした夜独特の雰囲気に、思わず身震いをした。  辺りは嫌なほどに静かで、それが何を意味しているのか、シアリスは短剣を持ち、身構えた。 ――間違いなく、何かが…… 「居る……」  と、ガサリと草むらが揺れたかと思うと、シアリスに向かって飛びついてきた。 「っ………」  呆気なく地面へと倒され、獣特有の匂いが鼻をつく。  しかし、シアリスはすぐさま反撃をした。  致命傷とまではいかなかったが、もっていた短剣で相手の腹部を突き刺した。  ずぶりと肉に食い込む感触がして、悲鳴にも近い獣の砲口が辺りに響き渡った。  シアリスは獣の腹部を蹴り、その下から転がるように逃げ、体勢を立て直した。  獣も、シアリスを睨みつけ、低く唸り声を上げていた。  短剣は獣の腹部に刺さったままで、他に武器になるようなものは持っていなかった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

130人が本棚に入れています
本棚に追加