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シアリスが目を覚ましたのは、完全に日は沈み、煌々と月が輝く夜だった。
ひんやりとした夜独特の雰囲気に、思わず身震いをした。
辺りは嫌なほどに静かで、それが何を意味しているのか、シアリスは短剣を持ち、身構えた。
――間違いなく、何かが……
「居る……」
と、ガサリと草むらが揺れたかと思うと、シアリスに向かって飛びついてきた。
「っ………」
呆気なく地面へと倒され、獣特有の匂いが鼻をつく。
しかし、シアリスはすぐさま反撃をした。
致命傷とまではいかなかったが、もっていた短剣で相手の腹部を突き刺した。
ずぶりと肉に食い込む感触がして、悲鳴にも近い獣の砲口が辺りに響き渡った。
シアリスは獣の腹部を蹴り、その下から転がるように逃げ、体勢を立て直した。
獣も、シアリスを睨みつけ、低く唸り声を上げていた。
短剣は獣の腹部に刺さったままで、他に武器になるようなものは持っていなかった。
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