130人が本棚に入れています
本棚に追加
次に襲い掛かって来られれば、間違いなく獣の餌になってしまう。
しかし、現実は非情で、背後からも目の前にいる獣と同じく唸り声を上げながら草むらから出てきた。
2匹は、シアリスの周りを、ぐるぐると弧を描きながらその距離を縮めてきた。
まずいとは思ったが、逃げ場はない。
その間にも獣との距離は狭まり、もう終わりかと諦めかけたとき、どこかで聞いたことのある懐かしい声が聞こえてきた。
「獣の分際で我のものに手を出すとはな……」
言うやいなや、獣たちは形状も留めないほど、肉の塊と化した。
シアリスは思わず口元を手で押さえ、顔を歪ませた。
「危ないところだったな………」
そう男はシアリスに声を掛け、近づいてくる。
「助けて頂いたことにはお礼を言います、でも、ここまでする必要はないと思いますが」
にこりともせず、シアリスは冷たく言い放った。
「……我はお前が無事であるなら良いのだ、それ以外は邪魔だ」
男も男で意味不明なことを話すなと噛み合っていない会話にシアリスは溜め息を吐いた。
「我は、お前を迎えに来た……さぁ、シアリス………共に――……」
最初のコメントを投稿しよう!