第1夜 月夜の晩に

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「お前は……、優しいな………あの時も―――」  何処か遠くを見つめ、男は懐かしそうに紫紺の瞳を細めた。 「………あの時?」 「いや、何でもない……… それよりも、家まで送ろう」  男は穏やかに笑うと、シアリスの側まで歩み寄り、すっ、と手を差し出した。  シアリスはそんな男の行動に、不思議な気持ちになった。 (何だろう……この感じ………)  シアリスは、小首を傾げつつも男の手に自分の手を重ねた。  それが当たり前の様に自然に。 「っ………、行(ゆ)くぞ」  男はそう言うと、重ねられたシアリスの手を優しく握ると静かに歩き出した。
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