130人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前は……、優しいな………あの時も―――」
何処か遠くを見つめ、男は懐かしそうに紫紺の瞳を細めた。
「………あの時?」
「いや、何でもない………
それよりも、家まで送ろう」
男は穏やかに笑うと、シアリスの側まで歩み寄り、すっ、と手を差し出した。
シアリスはそんな男の行動に、不思議な気持ちになった。
(何だろう……この感じ………)
シアリスは、小首を傾げつつも男の手に自分の手を重ねた。
それが当たり前の様に自然に。
「っ………、行(ゆ)くぞ」
男はそう言うと、重ねられたシアリスの手を優しく握ると静かに歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!