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「ここか……」
何の音もなく、その空間に人が現れた。
鮮やかな真紅の髪を風に靡かせ、紫紺の瞳で前方に見える家を見据えた。
「何処に居るのだ――…」
不意にぽつりと呟いた。
今は人の気配は感じられず、住んでいないのだろうと、男は思った。
それと同時に怒りも覚える。
男はその家―――シアリスという少女が住んでいる家に一歩ずつ近づいていった。
中の様子を探ろうと窓を覗いたが、生活に関するような物は特に置いていなかった。
そればかりか、前よりも随分物が無くなり、綺麗に片付いている気がした。
「本当に、誰も居ないのか――…?」
男は暫く宙空を睨み、何事かを考えていたが、口角を上げ、不適な笑みを浮かべた。
「まぁ……いい。お前はもうすぐ我の物だ――……シアリス」
そう言うと、再び何の音もなくその場から掻き消えた。
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