二度目の夏

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達哉の指定席からは、大阪の夜景が一望できる。 夜景が好きな達哉の、お気に入りの席。 個室もあるが、夜景が見えないし、遼二とも話せない。 それに、そんなに混んでいないし、何人かで飲みに来ている人ばかりだから、自分たちの会話に夢中で周りを気にする人は少ない。 何度もここに来ているが、気づかれた事はない・・・と思う。 気づかれていたとしても、声をかけられたことはない。 ファンが来ていれば気付くかもしれないが、ライブのためにここまでのランクのホテルに泊まる人は少ないだろう。 「お待たせしました」 遼二が特別なお客様に使う、バカラのグラスに生ビールが注がれる。 グラスに照明が反射し、注がれていくビールも輝いている。 「いただきます」 汗だくになった後のビールほど、美味しいものはない。 半分以上、一気に飲み干した。 まだ時間が早いからか、達哉以外に誰もいない。 1年ぶりくらいだろうか。 二人の共通点である、音楽の話題で盛り上がる。 芹那のアルバムも買ってくれていたらしく、とても気に入ってくれていた。 昔からロックやメタルを聴いてきた人に評価されるのは、とても嬉しい。 もちろん、JULIAの最新アルバムもかなり聴き込んでいるようだった。 「達哉、彼女できただろ」
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