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「雰囲気が柔らかくなった」
「そう?」
俺は、何も変わっていないつもりだったのに。
「うん。でも、そこじゃない」
「えっ、どこ!?」
「メンバーには、何も言われなかった?」
「メンバー?JULIAの?」
「そう」
「いや、何も・・・」
芹那と付き合うことになったと報告したときは、そうなると思ったと笑われた。
芹那と連絡をマメに取っているから、それをからかわれた。
他に、何か言われた・・・?
「何も、言われてないと思う」
遼二は、今日は店は暇だろうと勝手に決めつけ、ウィスキーをグラスに注いで一口飲んだ。
「そうか・・・いや、俺の勝手な感想なんだけど。アルバム聴いて、変わったなと思った」
「ウチのアルバムの中でも、かなり異色かな、今回のは。受け入れられなくて、離れるファンも多いんじゃないかな」
「そうだな、攻撃しかしてないよな。俺は好きだけど」
「あははっ、ありがとうございます。ハードロックとかメタルが好きな遼二さんは、気に入ってくれると思った・・・けど、俺、なんかおかしなところあった?」
レコーディングした時点の、最高を詰め込んだのに。
「ここが、とか、これが、とか、具体的なことじゃなくて・・・うまく言えないな。とにかく、1曲目を聴いた瞬間あれって思ったんだよ」
「アレンジも変わったと言えば変わった、けど・・・」
「攻撃的なアルバムで、みんなの演奏も攻撃的なのに・・・甘いんだよ、達哉だけ」
「そんなことは・・・」
「まだまだだなぁ、達哉も」
遼二は、得意げに笑う。
達哉もメンバーも、納得してレコーディングを終えた。
JULIAは、みんな遠慮せずに意見を言い合うから、達哉の音や声に違和感があれば、誰かしらが言うはずだ。
どの曲の、どの辺りだろうか。
達哉は、考え込んでしまった。
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