二度目の夏

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いよいよJULIAのツアーファイナル。 目立たない位置に、いつもよりかなり広く取ってある、関係者席。 埼玉スーパーアリーナの客席の数からしたら、関係者席なんて本当に一部だけ。 もちろんチケットはSOLD OUT。 開演時間の10分前だから、客席も埋まっている。 「さいたまスーパーアリーナって、こんなに広かったんだ…」 「ふふっ、そうね。さぁ早く座りましょう。関係者席(ここ)も埋まってきてるわね」 西川の後について、空いている席を探す。 「芹那ちゃん」 こっそりと、名前を呼ばれた方向を見ると、芹那のバンドメンバーと蓮がこちらを見ていた。 「ちょうど二つ、空いてるよ」 偶然開いていたわけではなくて、わざわざ取っておいてくれたのだろう。 ステージからかなり離れた2階席だが、まっすぐ前を見ると、巨大なモニターとマイクスタンドが見える。 相変わらず、ステージセットはシンプル。 演奏をしっかり聴かせたい、JULIAのこだわり。 開演まで、あと少し。 観客は、みんな笑顔。 グッズのマフラータオルやバスタオルを首や肩にかけて、準備万端。 男性ファンも、かなり多い。 単純にJULIAの音楽が好きな人もいれば、歌や楽器のテクニックに憧れている人もいる。 海外でも、4人のテクニックは注目されている。 今まで流れていた音楽が止まり、照明が落ちる。 会場から、歓声が起こる。 メンバーの名前を口々に叫ぶ。
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