二度目の夏

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暗闇の中で、ギターの音が鳴り響く。 スポットライトが、雪夜を映し出す。 モニターにも、雪夜の姿。 もちろん会場は、ギターの音だけが響いている。 雪夜がこの日のために作曲したギターソロが、だんだん激しさを増していく。 速弾きの一音一音が、観客の耳も目も釘付けにする。 関係者席のギタリストたちが、ため息をついたのがわかった。 それほど、雪夜のテクニックやギターの音が素晴らしいということ。 速弾きのフレーズが終わると、歓声が起こった。 雪夜は口角を少し上げただけで、まだ弾き続ける。 すると、雪夜のギターに絡みつくギターの音。 スポットライトが達哉を映し出すと、また歓声が起こる。 達哉が加わり、更に音数が増える。 大雨のように、会場に降り注ぐ。 激しい曲なのに、うっとりと聴き惚れてしまう。 互いのテクニックをぶつけ合い、引き立て合う。 時にはアイコンタクトで合図する。 アイコンタクトは、人見知りの雪夜が、達哉を信頼している証拠。 JULIAのライブでしか、アイコンタクトはしない。 達哉のギターソロも、雪夜に負けないくらいの速さと技術。 会場の視線を独り占めする。 存分に達哉のソロを味わうと、リズム隊が加わる。 ステージが明るくなり、次の曲が始まる。 達哉は最初から髪を振り乱して、観客を煽る。 観客も、それに応えるように、腕を挙げる。 雪夜は時々客席を見て、満足そうに頷く。 ユウも達哉と一緒になって煽るが、可愛さが勝ってしまい、別の歓声が上がる。 尚樹はステージの一番後ろから、客席をスティックで指したり、時々立ち上がったりして、存在をアピールしている。 最初から、JULIAもファンも、最高の盛り上がりを見せた。
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