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芹那は、最初のギターソロからの1曲目の展開に心を奪われ、その後もずっとステージやモニターから目を離せずにいた。
英詞をさらりと歌いこなし、ギターで雪夜と複雑に絡み、ステージに笑顔を向ける。
ギターを降ろすと、ボーカリストとしての本領を発揮する。
広い音域と、艶のある声。
マイクスタンドを女性に見立てて、優しく色っぽく触れる姿に、心臓が反応する。
少し首を傾げて、甘いフレーズを囁くように歌う。
鋭い目線や、自信に満ち溢れた表情。
女性を堕とす、悪魔の微笑み。
会場にいる全ての女性の視線が、達哉に集まっているに違いない。
ステージが一瞬暗くなり、曲調ががらりと変わると、メンバーは花道へ出て再びファンを煽る。
達哉は無言で花道の一番前まで歩いていく。
先端に立つと、歓声や悲鳴が上がる。
立っているだけで、美しい。
そして達哉が纏うオーラは、色がついているかのよう。
圧倒的な存在感。
滴る汗、乱れた長い髪、少し崩れてきたメイク。
アシンメトリーで少し変わったデザインの白いシャツに、黒いパンツというシンプルな衣装が、さらに達哉の色気を引き出す。
少し広めに開いた胸には、細いチェーンに小さめのペンダントトップがついているだけ。
指輪はいつもと変わらず、ゴツゴツといくつも重なっている。
そんな指輪だらけの手にマイクを持っているが、わざと使わずに、手や顎でファンを煽る。
そして、ぐるりと客席を見回す。
両手を耳に当てて、声を聴かせろと合図する。
達哉を呼ぶ声が大きくなる。
満足する大きさでなければ、首を傾げ、何度も呼ばせる。
もちろん、他のメンバーの名前を呼ばせることもある。
それを、3本の花道全てで繰り返す。
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