二度目の夏

20/36
前へ
/740ページ
次へ
ずっと鳴り響いていた楽器の音が、尚樹のドラムの合図で、聴き慣れたフレーズに変わる。 ここ数年、メンバーコールからのこの曲がお決まりになってきた。 ライブではほぼ毎回と言っていいほど演奏する曲。 JULIAのライブで、一番盛り上がる曲だと言っても過言ではない。 会場中が、待ってましたとばかりに湧き上がる。 達哉がニヤリと不敵な笑みを零す。 雪夜とユウは、ステージや花道を動き回り、ファンを煽る。 尚樹のツーバスが、さらに速くリズムを刻む。 雪夜とユウの音も、速く激しくなっていく。 達哉の低音は色気たっぷりで、鳥肌が立つ。 鎖骨にかかる小さなダイヤが、きらりと光った。 雪夜は、達哉とはまた違った形の白いシャツに、黒いネクタイ。 ユウはフリルの付いた白いブラウスに、黒いリボン、そしてトレードマークの黒いロングスカート。 尚樹は白のノースリーブシャツに、同じ生地のアームカバー。 全員、白のトップスに黒のボトムスで統一している。 アルバムでは、その衣装にジャケットを着ているが、さすがにこの暑さと熱気では、ジャケットは着ていられない。 音と会場の熱が、一つになる。 達哉はその中心で声を響かせ、そっと微笑む。 ステージ上の達哉は、常にオーラと色気が溢れ出している。 何をしても、完璧。 そして花道に瀬を向けてステージに戻り、マイクスタンドの前に立つ。 再びギターを持つ。 まだ、観ていたい。 夢の中にいたい。 終わらないで。
/740ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1818人が本棚に入れています
本棚に追加