二度目の夏

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芹那の目から、涙がこぼれている。 いつから泣いているのか、自分でもわからない。 色んな感情が混ざっていた。 JULIAの演奏力と、表現力。 達哉のギターの音と、技術。 会場の一体感。 ファンの熱量。 そして、達哉の声や歌の全て。 感動や羨望などという言葉では表現できない感情。 今の実力で満足してはいけない。 JULIAに、達哉に、少しでも追いつきたい。 もっと、練習したい。 聴いている人を、感動させたい。 JULIAがステージを降り、会場中がJULIAを呼ぶ声に包まれる。 バンドメンバーは、圧倒されていた。 「JULIA、ハンパねぇな・・・」 「達哉、改めてスゲーと思ったわ」 「バケモノだな」 「・・・姫、泣いてるの?」 「えっ、あのっ・・・」 ・・・あたしの方、見なくていいのに。 恥ずかしい。 「わかるよ。俺も泣きそうだった」 そう言って優しく、そして少し悲しそうに微笑んだのは、ギタリスト。 達哉が作ったギターフレーズを弾いている、ギタリスト。 達哉の、あのギタープレイを見てしまったら・・・ 他のメンバーも、黙ってしまった。
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