二度目の夏

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「ほんとに?」 「ほんと。嘘ついてどうすんの」 目の前に、いつもの達哉の優しい笑顔。 「だから、今日は頑張っておいで」 「うん・・・」 芹那はこの後、明日の音楽イベントの最終確認がある。 スタジオで、バンドメンバーと音合わせをする。 次の日の入り時間が早いため、そのまま帰宅するからと西川に何度も言われている。 「そんな顔するなよ」 ・・・離れたくない。 せっかく会えたのに。 「明日、俺たちも出るし、会場で会えるだろ」 「・・・2人きりじゃないもん」 「そうだけどさ・・・夏休み中に、時間作るから」 「うん・・・」 「いい子にしてて」 「やだ」 「悪い子でもいいよ、俺のこと好きなら」 「悪い子になる」 「いいよ、なにするの」 「タバコ吸う」 「あはは、学校とマスコミにバレないように気をつけろよ」 可愛いなと笑いながら、むくれている芹那の頬を撫でる。 「じゃあ、ウワキする」 達哉は一瞬、驚いたような顔をしたが、いつもの自信に満ち溢れた笑顔に戻った。 「やれるもんなら、やってみな。俺の方がいい男だって、再確認するだけだよ」 じっと芹那を見つめてから、優しくキスをする。 柔らかい、口唇の感触。 「好きだよ」 そっと呟いて、何度も優しく口付ける。 そして、きつく抱きしめる。 「良かった、少しでも会えて」 「うん・・・でも、離れたくない」 「それは、俺も同じだよ」 「うん」 しょんぼりしてしまった芹那を慰めるように、そっと髪を撫でる。 「浮気はダメだよ」 「しないもん」 ・・・冗談でも、不安にさせるようなこと、言うなよ。
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