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目が覚めると、目の前に錆び色の世界が広がっていた。
どこまでも続く、地平線のような“それ”。
ぼやける目をこすり
よく見ると、どうやらそれは巨大な何かの塊らしかった。
とにかく、とてつもない長さだ。
どれくらいの長さなのか確かめようとしたが、
それはどこまでも続いていた。
どれくらい進んだのだろう。
いっこうにかわらぬ景色に、そろそろ眩暈がしてきた。
同じ景色ばかり見ていたせいで感覚が狂ってきた。
その狂った感覚を戻すために、その場で少し休むことにした。
…何の音だ…?
先程進んでいた方向から、
何か大きなものがこすれるような音が聞こえてきた。
時折、キィキィと耳障りな音を響かせながら、
だんだんと音が大きくなってきた。
なんだ…?
なんなんだ。
あの大きな塊は。
物凄いスピードで、こちらに向かって…
う、ぁあぁぁあぁぁぁっ
キキー…
『次は、××駅、××駅。
お乗りのお客様は…』
ゆっくりと止まった電車の車輪のそばに、
誰にも気付かれることのない
潰れた蟻の死骸があった。
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