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通された部屋でお茶を飲み一息……
慧音「さて、用件を聞かせてもらおうか。」
湯呑みを置いた慧音が一言。
橙「はい、実は慧音さんにお願いがあって……」
慧音「私に、ということは、勉強か?それとも……」
真の方を見る慧音。
真「後者の方です。
慧音さんの能力を見込んでのお願いです。」
慧音「私の能力で何をしろと?」
慧音の表情が真剣になる。
真「慧音さんの能力は『歴史を食べる程度の能力』……そうですよね?」
無言で頷く慧音。
真「その能力で俺の家族や友人の中の『俺の歴史』を食べて欲しいんです。」
橙「!?」
驚きを隠せない橙。
慧音「……事情を聞かせてくれるか?」
真「はい。」
そして、今までの経緯を慧音に説明する。
慧音「なるほど……だが、真君、それがどういう意味か分かっているのか?」
一層険しい表情を見せ慧音が問い掛ける。
真「はい、元の世界の俺は『居なかったことになる』んですよね?」
慧音「そうだ、それに君は耐えられるのか?」
真の目をじっと見つめ慧音は問い掛ける。
真「……このままじゃ家族や友人は『俺の死』って現実を長い間背負うことになります。
それを取り除けるのなら……」
真剣な眼差しを返す真。
慧音は、ふうっと一つ息を吐く、そして……
慧音「……本気……なんだな?
分かった。家族や友人の記憶の方は任せてくれ。」
そう言って真の肩をポンと叩いた。
真「慧音さん……ありがとうございます!」
深々と頭を下げ礼を言う真。
慧音「気にすることはない、家族や友人に重荷を背負わせたくない気持ちは痛いほど分かる……ただ。」
真「ただ?」
慧音「幻想郷の暮らしは君が思ってる以上に大変になるだろう。
君自信も、あまり気負い過ぎないようにな。」
真に対し優しい笑顔を見せる慧音。
真「はい、お気遣い感謝します。」
そう言って立ち上がる真。
次いで橙も立ち上がった。
慧音「帰るのか。
大したおもてなしも出来なくてすまなかったな。」
真「いえいえ、お気になさらず。」
慧音「記憶の件、確かに承ったぞ。」
真「はい、お願いします。
それでは失礼します。」
橙「お邪魔しました。」
二人は寺子屋を後にした。
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