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その日は蝉の鳴き声を聞くようになってちょうど一週間という日だった。
照りつける太陽は徐々にその自己主張を強くし、真下の人々に自らを直視できないようにする。
七月中旬、夏も近づく熱い日から…物語は始まる。
沙織は頬に汗を滲ませながらも、事務所の周りを掃除する。
常に依頼人が入りやすい環境にするのは基本という方針の下、沙織は太陽の主張に耐えながら箒を動かしていた。
…まったく、オフィス街の真っ只中だからポイ捨ても多いのよね~あ~しんどい。
沙織は心とは裏腹にテキパキと仕事をし、ゴミを片付けていく。
―だが仕事に夢中だった沙織でも、その人物が歩いてくるのは見えていた。
その人物は照りつける太陽を反射しながら歩いてくるので、どんな姿かは分からないが…確実にこちらに向かってくるのは分かった。
沙織はそれを気にする事なく掃除を続けていると、突然その人物が歩みを止める。
反射的に沙織がその人物の方を見ると、その格好は少々異質だった。
その人物は白衣を身に纏っている女で、一見すると医者のように見える。
だがその身長は低く、中学生位といったところだろうか?
ポニーテールにメガネという知的なイメージを持っている一方で、履いているのがサンダルという一見ラフにも見えるその組み合わせは…やはり異質だった。
女は何も話さずにその場に立ち尽くし、首を少し上に向けて何かを眺めている。
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