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夏、ひとりとふたり。
ふと、乾いた風が、私の鼻をくすぐった。
じんわりと汗が滲み出る。
ここは夏。
まだ初夏も少し越したくらい。
「ねぇ、誰かあそぼうよ」
いやに響く自分の声。
そこは広いのに、視界は狭くて、私は夏空の下にひとりだった。
悲しくなって、顔を下に向けた。
草たちが薄風に靡く。
──生きていたって仕方がない──
私はなにを考えるでもなく、そんなことを思っていた。
それはきっと、自分の存在意義を認めたかったからだと思う。
だって…。その問いに答えなど無いから。
草原に一迅の風が吹いた。
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