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「あぁ、私が殿方をお姫様抱っこする日がくるなんて夢にも思いませんでした……」
「俺だって思ってませんから!」
悲劇のヒロインみたいに泣き真似するのは心臓に悪い。
しかし、この人は何者なんだろう?
雰囲気的には年上みたいだし、俺の名前も知っていた。
俺は部活に所属しているわけではないので、先輩たちとの繋がりは皆無だ。
「あらあらぁ~本当に思い出せないんですか?」
「何で考えてることがわかるんですか!? って、やっぱり俺のこと知ってるんですか?」
「うふふ~それは内緒です。 秘密は乙女のたしなみですよ♪」
心底幸せそうに笑う姿は見覚えがある気もするのだが、どうしても思い出せない。
「良いんですよ……ゆっくりと思い出してくれれば……ただ、純也さんに会えたことが嬉しいですから……」
ちょっぴり憂いを帯びた横顔。
なんとなく、この人の寂しそう顔は見たくなかった。
「えっと、名前を教えて下さい。 絶対……絶対に忘れないから」
情けないお姫様抱っこの状態だが、俺は真剣な眼差しで女の子を見上げる。
すると、女の子はゆっくりと顔を寄せてきた。
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