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春の暖かい風に吹かれ、私の手元に収まるべきリボンが宙に舞う。
「あっ、リボンが!?」
赤毛のセミロングの髪をはためかせ、最愛の妹が声をあげる。
真新しい中学校の制服に身を包んだ妹……美鈴【みすず】ちゃんの悲しむ顔を見たくなくて私は即座に動いた。
足に力を入れ、リボンの落下地点へと体を割り込ませた。
「キャッチしましたよ美鈴ちゃん!」
「危ない! お姉ちゃん!?」
美鈴ちゃんの声に驚き、自分の立ち位置を確認する。
そこは道路の真ん中。
夢中になりすぎて、私は道路に飛び出してしまったらしい。
そして、吸い込まれるようにトラックが私に近づいてくる。
キキーッ!
あっ、死んじゃいますね私。
非凡な頭脳が即座にトラックを回避する方法を否定する。
片平小百合【かたひら さゆり】の人生はこうして幕を閉じる……そう、思っていました。
「退いてぇーーー!」
ドンッ!
横から力強く押され、トラックの車線上から押し出された。
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