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立ち上がり、美鈴ちゃんの頭を優しく撫でる彼の表情は穏やかだった。
その優しさに触れ、ポロリポロリと妹は涙を流し始める。
「君が守りたかった人は無事だよ……でも、君が死んだら悲しむ人もいるんだ……なぁ、そうだろ?」
「えっ? あっ、当たり前です!」
不意に話を振られ、驚きつつも頷くと彼は無垢な優しい笑顔を浮かべる。
「ほらな? 君を大切に思う人を悲しまさせちゃ駄目だぞ。 けど、姉貴想いの良い奴だな」
「うぅ……ぐじゅ……えっぐ、あり……う」
嗚咽を漏らしながら男の子に泣きつく美鈴ちゃんを彼は優しく私の元まで促した。
「こんなに可愛い妹を心配させちゃ姉貴失格だぜ? んじゃ、俺は行くかな」
「まっ、待って下さい!」
「んあ?」
風のように現れ、去っていこうとする彼を私は引き留めた。
私はまだ彼にお礼すら告げていない。
このまま彼と別れたらきっと後悔してしまう。
「あっ、ありがとうございます! あなたのお陰です! 本当に……本当にありがとう!」
「あはは、別に気にするなよ。 でも、助けることが出来て良かったよ。 俺にも【みゆ】って妹がいるからさ」
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