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照れくさそうに頬を掻きつつも、彼の瞳は大切なものを守ろうとする輝きを備えているように見える。
「俺にも守りたい奴らがいるから、その子の気持ちもよくわかるんだ」
「そうですか……優しいんですね」
「優しくないって! ったく、恥ずかしいぞ」
太陽のように輝く笑顔を見せる彼に私の胸は高鳴る。
あらあらぁ……なっ、何でこんなにドキドキしているのでしょう?
「あっ、あの……良かったら名前でも……」
「うがぁー!? 何処におるのだ【じゅんや】!?」
「げっ!? 【しんら】から逃亡してたの忘れてた!」
道路の角から一人の可憐な少女が姿を見せた。
腰まである黒真珠を連想させる黒髪に整った顔立ちの少女は男を発見すると犬歯を剥き出しにし、唸り声をあげた。
「がるるる、私という妻の前でナンパとは良い度胸なのだ……」
「ちょっ、ちょっと待て! 俺は助けただけで、」
「問答無用なのだーーー!」
「ギャース!?」
悲鳴と嵐のような怒声を交えながら彼らは去っていった。
何が起きたのか未だに理解できない。
けれど、私の愛すべき妹は無事であることだけはわかる。
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