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「お姉ちゃん……あの人……変な人だったね」
「えぇ、不思議な魅力満載な人でしたね……」
私と美鈴ちゃんは走り去っていった【じゅんや】という男の子を見送った。
それは春の突風によく似た一瞬だけの出会い。
私たち姉妹の胸に輝く暖かな種を植え付けた出来事。
それが芽生えるかはわからない。
「あの人にお礼言えなかった……また、会えるのかな?」
寂しそうに呟く美鈴ちゃんに私は笑いかける。
「大丈夫。 きっと会えますよ♪」
「何で?」
不思議そうに小首を傾げる美鈴ちゃんの髪についた『あるもの』を取り除き、彼女に見せてあげた。
「白い……羽?」
「えぇ、きっと神様がもう一度再会させてくれますよ♪ だから、信じて待ちましょうね♪」
「うん、信じるよ♪」
こうして一人の男の子との出会いが私たち姉妹の運命を変えた。
そして、偶然にも暖かな風によって揺れる美鈴ちゃんの膝に巻かれたハンカチには……白い百合の花と黄色の鈴が描かれていた。
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