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春馬『あぁ、これだよ。』
それを問われ、俺は紙袋から俺が買ったプレゼントを出した。
咲『……マフラー?』
そう。マフラー。
俺はマフラーを買った。
なんも特徴のない、白いマフラー。
金銭感覚なんか分からんけど、別に高いマフラーでもないはずだ。
咲『…いや……さすがにマフラーはまだまだ使わないんじゃ……』
春馬『冬をなめたらいかんぜよ?』
そう言い、俺はマフラーを広げ咲の首にかけてみる。
そうされて、咲は戸惑いながら俺を見る。
咲『ちょっとっ、何してんのよっ…』
春馬『それやるよ。』
そう言うと、咲はキョトンとしてしまう。
咲『え…私に…?』
春馬『ほかに誰がいんの?』
俺がそう言うと、咲はモゴモゴと口を動かして…小さい声で礼を言った。
…言ったのか?…多分言った。
咲『…でも……なんでマフラーなんか……』
春馬『……冬はさぁ……寒いからな…』
俺はココに来るまで、ずっと冬を感じていた。
いくら外が温かくても、心の……なんかよくわかんねぇ場所が寒い。
そんな生活を何年も味わったから、冬の本当の寒さを知っている。
春馬『…やっぱさ……俺が「誰かにあげたい物」って言ったら……マフラーとか、そういう暖かいやつなんだよ。』
明後日の方を向いて、そう語る。
それを聞いた咲は眉を曲げる。
咲『…頭…どっかで打った…?』
春馬『カッコいい事言ってたくない俺!?』
そんな本格的に心配そうな顔しないで!?
……いや確かにサブい台詞だったけど。
春馬『とりあえず、大切な人には、俺が味わった冬を感じてほしくないから』
咲『えっ…?大切な人って……』
咲はマフラーをギュッと握って、少し頬を染める。
春馬『…というわけで咲さん、お昼ご飯何か作って下さいお願いします。』
咲『…なんだそういうオチか…。』
急に冷めた目になってマフラーを外した咲なのだった。
なんだこの咲のリアクション。
春馬『もしかして勘違いした?』
咲『ハルのお昼は海苔3枚ね。』
春馬『すみませんでした暖かい食事がしたいです。』
と、こんな感じで今日のタイガースの初の依頼を解決したわけで。
…つーか優先輩は「タイガース」ってネーミングについては全くツッコミなしだったな。
ダサくない?ダサいよね?
でも、こうやって仲間と一緒に何かを成すってのは、案外いい気分だったりする。
青春ってのは、誰かと一緒に歩んでこそなんかね。
この青春の旅は、まだまだ始まったばかり。
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