二人だけのベタな夜

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夜。 春馬『……あ。』 晩飯を食い終わり、俺は新聞のテレビ欄を見て声をあげた。 咲『どうしたの?』 食器を洗っていた咲がそう尋ねてきて、俺はテレビ欄を指差しながら咲に見せる。 春馬『9時からジャパニーズホラー映画があるらしいですぜ姉さん。』 そう、そのテレビ欄には、「絶叫できないぐらい怖い」という意味わからん謳い文句が書かれたホラー映画が今日テレビで放送するらしいのだ。 昔よくフラットにホラー映画ばっかり見せられた時があって……そん時から、ホラー映画はちょっと好きになっちまったんだよなぁ。 咲『…べ…別の番組見ない…?』 春馬『なんで?お前ホラー映画よりテンションのあがるやつあるか?ない!そうさない!』 しかもジャパニーズホラーはもうあのじれったい感じがたまらないんだよ。 俺の高揚に対して、咲は口元を引き攣りながら黙り込む。 咲『…じゃ…じゃあ私は部屋に行くね……』 咲が何故か部屋へ逃げようとした。 春馬『おいおい見ねぇの?』 咲『いやぁ……私はいいや…』 俺の目を合わせようとせず、気のせいか額に汗を垂らす咲。 なんだこの反応。まるでこれは… 春馬『……怖いのか…?』 すると咲は明らかに反応した。 咲『こ…怖くなんかないわよっ!!』 春馬『…へぇ~~……』 コイツ……絶対怖いんだ。 こりゃ咲の弱点を見つけたかもしんねぇぞ。 咲『別に怖くなんか…』 春馬『あ~~いやいや、イイよ別に~。怖いんだったら別に見なくてイイよ~。』 俺はそう言ってソファーにもたれた。 いっつもバカにされてた俺が、今この瞬間はバカにできる立場にいる。 普段俺に冷たい仕返しだ!ちょっとくらい優位に立たせてもらうぞ! 春馬『まぁ幽霊怖いんならしかたないよねぇ~。高校生にもなって幽霊怖いんならしかたないよね~。』 咲『だから怖くないってば!!』 そう言う人は大体怖がってるんですよ。 咲『幽霊なんてプラズマか何かの塊なわけだし……怖がる理由なんか……』 そうブツブツ呟きながら、咲は俺の隣に座る。 望む所だと言わんばかりの臨戦態勢だ。 春馬『……いや、まだ9時じゃないんだけど……』 咲『そうよ、もし万が一何かの間違いで奇跡的に幽霊がいたとしても……わ…私霊感なんかないし……』 あ、ダメだこの子。 やりすぎてしまったかもしれないが、これはこれで楽しそうだからこのままにしとこう。
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