二人だけのベタな夜

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そんなこんなで、結局咲も一緒に見ることになった。 …なんか映画よりも咲の怖がる姿を見る方が楽しそうだぞこれ。 9時になり、ホラー映画が始まる。 ちらっと隣を見ると、咲は明らかに怖がりながら小さくなっている。 脅かしてみたらどんな反応するのだろうか。 春馬『……わっ』 咲『イヤァァっ!!』 俺がちょっと脅かしてみただけで、咲は前屈みになって耳を塞いでしまう。 そのリアクションのボリュームに俺も耳を塞いでしまう。 俺にからかわれただけだと気付いた咲は、涙目で俺を睨む。 ……ぱねぇ、楽しい。 気がつけばもう始まってから一時間ほど経過していた。 映画の内容自体は、なんか思ったほど怖くない。誇張宣伝だったみたいだ。 また俺はちらっと咲を横目で見―― 春馬『――――!?』 横目で見ると、咲が俺の半身に密着していた。 ちょっと待て、さっきまでこんなに密着してなかったよ!? ………おちつけ……これはアレだ、自然とそうなってしまっただけだ!! まぁそりゃ怖い映画観てると誰かと密着したくなる気持ちは分からんでもない!! なんで俺がキンチョーしちゃってんだよ馬鹿っ!! 「「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」 映画はちょうど幽霊がでてきたみたいで、まさしくキャァ~~なシーン。 正直それどころではなかった為そのシーンの感想はないんだけど、その後すぐ俺は自分の手に温もりを感じた。 あれ!?この手の温もりは何!? 俺は恐る恐る自分の手を見ると…咲が、俺の手を握ってた。 春馬『――――!?』 ちちちちちょっとまてぇい!? いくらなんでもそんなに怖がらなくてもよくね!? 咲の顔を見ると、明らかにめちゃめちゃ怖がっている。 顔面蒼白で、目にウルウルと涙を溜めて堪えていた。 これは映画どころじゃねぇぞ!? ホラー映画だけど違うジャンルでドキドキしてるぞ俺!? つーかなんで本人はなんも言わねぇの!?馬鹿!? ……そして30分経過。 相変わらず手を握ったままの咲様。 しかも怖いシーンが近づくにつれて強く握ってくるんだからぱねぇ。 …もう……咲を怖がらせるつもりだったのに……俺がダウンする……。 春馬『…あの……咲……』 「「きゃぁぁぁぁぁっ!!」」 咲『いやぁっ!!』 また良いタイミングで映画のドッキリシーンが訪れ、そのせいで咲は俺の腕に思いっきり抱きついてくる。 …ぐはぁぁぁっっ!!?? 無理無理!!めちゃめちゃ密着してるって!! 誰だコイツこんな感じの女の子でしたっけ!? あなたそんなキャラじゃないでしょ!? キャラミスってることに気づいてよお願い!! でもトータルで言えば幸せな気もするからちょっと悔しい!!
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