能ある鷹は爪を隠す

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その後、気づけば俺らは校舎裏に立っていた。 由紀『よし勝負だトラ!かかってきなさい!』 大雅『おっしゃ!!勝負の種目はなんだぁ!?なんでもかかってこいや!!』 あれから、冗談だと思っていた由紀と大雅の勝負議論が白熱して、何故かマジで勝負をする流れになってしまっていた。 俺と咲は見届け人として付き添い。 由紀『種目?勝負なんだから種目なんてないよ!屍を越えた方が勝ちだよ!具体的には地面に倒れた方が負けだよ!』 大雅『は?いやいや、流石に女に手は出せねぇよアホ言ってんじゃねぇ!!』 まさかの肉弾戦闘の提案に流石の大雅も躊躇いを見せる。 由紀『おやおや?自信がないのかなトラ?』 大雅『なめんじゃねぇやってやらぁ!!!』 春馬『あの馬鹿煽り耐性低すぎない?』 もうワンクッションくらいは躊躇えよ男として。 大雅は頭に血が回ったようで、ガキ大将のように腕をぐるぐる回してその気になっていた。 春馬『待て待てお前ら本気でーー』 止めに入ろうとした俺の肩を咲が叩く。 咲『大丈夫よ。面白いの見れるから見てなよハル。』 春馬『は?大丈夫ったって…』 黙って見てろ、と咲はニヤリと笑っている。 いやいやいや、このままだと小さい女の子が大きい馬鹿に暴行されるヤベェ現場が広がりそうなんだけど… 大雅『俺の最強の礎となれぇぇ!!』 春馬『うわめっちゃ恥ずかしい台詞。』 謎の掛け声と共に、大雅は駆け出す。 突っ立つ由紀へと腕を伸ばし、掴んで身動きを封じようとする動きだ。 まぁ暴力を奮うよりは比較的理性のある制圧方法だろう。 が、その大雅の伸ばした腕を、由紀はスルリと交わして懐に潜り込む。 そのまま由紀は素早く大雅の重心の乗ってある脚を蹴る。 それにより大雅は、掴み掛かろうとした反動も相まって前のめりによろけてしまう。 そのよろけた隙を見逃さず、由紀は大雅が伸ばしていたその腕を自らの肩に担ぐようにしてーー 由紀『どっせぇぇぇい!!』 大雅『ぬおぉぉぉぉ!?』 力を入れる時の定番の掛け声と共に、そのまま大雅を背負い投げの要領で前方へと放り投げてしまった。 大雅はそのまま宙を舞い……すぐに、ドスンと痛そうな音を立てながら地面へと伏すように顔面から着地した。 由紀『はい、私の勝ち!!どやさ!!』 地面へ倒れる大雅へと、勝利宣言をする由紀。 何も言わぬ大雅。 口をポカンと開ける俺。 咲『ね、大丈夫だったでしょ。』 春馬『……え?そういう感じ?見た目に反して戦闘力高い系?ハムスターかと思ったらゴリラだった系?』 ドヤ顔で胸を張る由紀がとても男らしく見えた瞬間なのだった。 なんやこいつ。
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