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朧気な白い光を身に纏いながら桜花さんらしき人は口を動かす。
『私も……君も森羅ちゃんだって繋がっている。 君が繋がった手を離さなければ、約束は……いつの日か叶うよ』
有り難い。
約束の尊さを熟知している人からの励ましは何よりの力になる。
「俺は桜花さんとも約束を交わしたいです。 あなたの叶えたい望みは何ですか?」
俺の言葉に可愛らしく小首を傾げ、顎に人差し指を添えて考え込む姿はとても一児の母とは思えないほど幼い。
『う~ん、それじゃぁ~お孫さんが出来たら見せに来てねぇ~♪』
「ぶっ、なっ、なななななっ、何を言っているんですか!?」
『あははは、冗談だよ♪ 本当の願いは……忘れないでほしいかな』
ほんのりと桜花さんの瞳に寂しげな色が強くなった。
それこそが桜花さんの本当の姿であり、願いなのだろう。
「忘れません。 森羅が隣にいる限り、俺はあなたを忘れることなんて出来ません! それに俺は森羅と離れるつもりなんて皆無だから約束は絶対に叶いますよ!」
笑顔でサムズアップを送ると桜花さんも戸惑いながらサムズアップを返した。
『約束だよ! 破ったら化けて出るから覚悟してねぇ~! それじゃ、またね♪』
そうして桜花さんの姿は霧のように薄れて消えてしまった。
満開の桜も霧散しており、ひっそりとした夜の静けさが戻ってくる。
「どうしたのだ純也?」
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