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ふらつきそうな足下に注意しながら俺は森羅の焦った顔を覗き込み、優しく微笑んだ。
大丈夫だ。
俺はきっと森羅と一緒に歩いていける。
「帰るぞ森羅。 それとこれからも一緒にいような?」
「うっ、うむ! やっぱり純也は最高の旦那様なのだぁ~♪」
この笑顔が見れるなら苦手のことも辛いことも、悲しいことだって乗り越えられる。
「どうでも良いけど下手に喋ったり、動いたら落ちるぞ。 あっ」
ドサッ!
「みぎゃぁ!?」
とっさに抱きつこうとした森羅に気を取られ、足下が疎かなになった俺はお姫様を地面に落とした。
「ぬがぁ!? めちゃめちゃ痛いのだ! ガルルル!」
「ちょっ、俺は悪くないだろ!?」
「シャァーーー!!」
獣化した森羅は四足歩行になり、狙いを俺の頭に絞って飛びかかってくる。
寸前で転がるような動作で森羅の噛みつきを回避した俺は、すぐさま起きあがり、転びそうな足に喝をいれて走り出した。
「ったく、恋人らしい甘い生活を期待するのは無理なのかねぇ……って、マジで逃げなきゃ食われちまう!」
「ガルル!?」
いつものやり取りを重ねながら今日という日も終わりを迎える。
鮮やかに輝く月の下、この時の俺たちの胸に去来したのは幸せな想いだけだ。
だけど、今から遠くない日……俺たちは多くの苦悩を経験することになるとは考えてもいなかったんだ。
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