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ゆさゆさ……
「う~ん、後5分……」
ゆさゆさゆさ……
朝の微睡みの中、ゆっくりと俺の体が揺すられる。
まるで母なる海に抱かれているような優しいリズムで繰り返し、揺すられると逆に起きるタイミングを失ってしまう。
「……てよ」
「むにゃ……嫌だ」
「パ……なきゃ……だよ?」
ゆさゆさゆさゆさ……
少しばかり揺する力が増したようだが、その力はあまりに非力で俺を起こすには至らない。
……つ~か、未由の起こし方の割にはバイオレンスさが足りたいな。
いつもの未由なら『妹踵落とし!』やら『妹のおはようのCHU~♪』などの頭が痛くなる暴挙に出るはずだ。
ちなみに母親は例え入試や試験などの息子の今後が関わる大事な日でさえ起こすようなことはしてくれない。
むしろ、16年間生きてきた中で母親に起こされた覚えがない。
……なら、森羅か?
頭に浮かんだのはお嬢様の姿。
目を閉じていても、はっきりと脳裏に焼き付いた森羅の笑顔に俺は赤面してしまう。
朝から恋人と出会えるのは最高の喜びだ。
そして、新婚さんのようにイチャイチャしながら朝を迎える絶好のチャンスでもある。
「……パ……起きてよ」
「う~ん、起きてほしかったらキスしてくれよ」
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