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理由は簡単だ。
少女は瞼をきつく閉めて、まつ毛を震わせながら唇を寄せてきているからだ。
「ちょっ、ちょっとtime! アッ、アリ、」
「ん……」
ちゅ……と小柄な少女の触れてはいけない禁断の唇が俺と重なった。
触れるのは一瞬だが、脳内を駆け巡る甘い痺れは麻薬のように刺激的過ぎだ。
「ジュンヤパパ……起きた?」
「……おはようアリス」
体を起こして俺はベッドの上で学校の制服を身に纏っているアリスと正面から向き合った。
アリスはバイト先の一風変わった……いや、尋常じゃない変態の店長の娘さんだ。
二学期から俺と彼女は同じクラスになり、とある事情でアリスの子猫を預かることになった。
アリスはその件をきっかけに俺に懐くようになり、今では子猫の親という意味を込めて『パパ』と呼んでくれている。
「あのさ……俺から言い出したことだけど、キスなんてしたら駄目だぞ」
「……? 僕の国だと挨拶だよ」
アリスは青い瞳の奥に疑問符を浮かべつつ、俺の瞳を真摯な眼差しで見つめ続けた。
あまりに純粋な眼差しに俺は戸惑い、逆に視線を外してしまう。
「う~む、だけど、こういう事は恋人同士じゃないと……な?」
「……ごめんなさい。 でも……僕、キスしたのはジュンヤパパが初めてだよ?」
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