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歩きだそうとした足を止めて、俺は振り向く。
「遅刻するから早、」
ちゅ……
頬に天使の羽のように柔らかい森羅の唇が触れた。
あまりにも予想外な不意打ちに俺は対処できずに固まってしまう。
石像のように硬化している俺を余所に、森羅は自らの触れた頬に人差し指を這わせる。
「おはようなのだ純也♪ 恋人なのだから、これくらいは良かろう?」
「嫌だ」
「なっ、何故!?」
ガビーンッという擬音が似合いそうなほど森羅は驚愕している。
俺は森羅の攻撃で胸をときめかせているのがバレないようにそっぽを向く。
くそっ、このままでは森羅の尻に敷かれてしまう!
ならば、ちょっぴり森羅を困らせて優位に立ってくれるわ!
『ぬはははっ!』と豪快に笑いだしたい気持ちを抑え、俺は森羅の肩を掴んで真っ直ぐに黒真珠のような瞳をのぞき込んだ。
「唇にしてくれなきゃ嫌だ! 森羅ちゃんがちゃんとキスしてくれないと嫌だもん!」
ぐはっ、我ながら痛い子過ぎるぜ。
でも、これで森羅は懲りるだろうから……
「純也ぁ~♪」
「へっ、むぐっ!?」
ムチューッ!
俺の予想をぶっちぎり、森羅は唇を重ね合わせてきた。
さすがに嬉しさよりも照れくささが先行した俺は森羅を引き離した。
「なっ、ななななっ、何をしてるんだよ!?」
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