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「なぁ、純也?」
夕焼けを背に彼女は微笑みながら、細くしなやかな指先で紐解いた長い髪が風に流されてしまわないように押さえた。
窓の縁に腰かけてモデルのように長い足であぐらをかきながら座る会長はワイルドなのだが、その存在全てが危うく、手放せば飛んでいってしまいそうな弱さに満ちている。
「お前の目に映る学校は楽しいか?」
「はい、楽しいっすよ」
「そっか、みんながそんなふうに思ってくれてたら……幸せだよな」
寂しげな笑み。
普段の強さに紛れ込んだ陰りに俺の心はざわつき、平静でいられない。
「何で……そんなに寂しそうなんですか?」
「寂しい? ……あぁ、合点がいった。 そうだな、私はきっと寂しいんだ」
自らの肩を抱きしめながら、渚さんは震える。
まるで、世界が全て己の敵だと言わんばかりに拒絶しているように見えた。
「……」
何も言えない。
でも、俺は何故か今日一日の流れを思い出そうと躍起になっていた。
言うべき言葉は過去に眠っていることが大多数だ。
寂しげな渚さん。
俺は陰った顔が見たくなくて必死に思い出していた。
そう……そもそも何故俺が渚さんと生徒会室で向き合っているのかを振り返ろう。
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