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「はぁ……」
18回目。
耳にしているだけで、こちらの気分まで暗くなりそうな重いため息に食器を洗う俺と渚さんの手は止まりがちになってしまう。
俺は一度完全に仕事の手を休め、隣に立つフリフリのエプロンドレスを身にまとったメイド長のような出で立ちの渚さんに向き直った。
「渚さん、バイト中ですよ?」
「んあ? あぁ、悪い悪い。 完全にボーッとしちまったな」
快活な笑みを浮かべるが、その笑顔も何処かぎこちなさを感じる。
「さぁ~て、真面目にバイトを勤しまないとな!」
力強い言葉を口にしながら渚さんは使用済みのデザート皿の山を手にする。
う~ん、一応は大丈夫なのかな?
「……はぁ、うわわわッ!?」
「げッ!?」
ガチャッ、ガシャッ!
パリッ、パリッ、パリッ!
立て続けに鳴り響く最後の断末魔をあげた皿が残骸となって床に飛び散る。
渚さんは呆然としており、何が起こったのか理解していないようだ。
「ちょっ、ちょっと大丈夫ですか!? 怪我はありませんか!?」
「あっ、あぁ。 大変失礼しました!」
渚さんは正気に戻ったらしく、慌ててフロアのお客さんに詫びの言葉を投げた。
そして、子犬がプリントされた可愛いパンツが見えるのもお構いなしにしゃがみ込んで皿の残骸を集めようとした。
「素手で集めたら怪我しま、」
「痛ッ!?」
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