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勘違い?
いったい俺は何を勘違いしているんだ?
頭上にいくつも疑問符を浮かべていると、森羅は幸せそうに俺の右手と自身の左手を繋ぎ、桜の大木に背中を預けた。
そして自らの心音を確かめるように空いた右手を胸に当て、ゆっくり瞼を閉じて深呼吸をした。
「約束は自分勝手なものではないのだ……約束は互いの願いを『交わす』ことで生まれ、そして互いに『叶える努力』をするから成就するのだ」
「……互いの願いを叶える努力」
こくりと森羅は俺の言葉に頷き、ゆっくりと瞼を開ける。
そこには黒い真珠を思わせるような意志の強さを表す瞳があった。
どこまでも吸い込まれるような黒い瞳。
いつまでも視線を交差させておきたい輝きを宿している。
「純也は私の為に約束をしようとしているが、そんなものは自惚れなのだ!」
「わっ、悪い」
ぷくぅ~と頬を膨らませながら森羅は怒っているというよりは拗ねた表情を浮かべた。
しかし、次の瞬間にため息を吐いて笑顔へと変化する。
「だから、私と……二人の願いを叶える為に約束を交わすのだ!」
「あぁ……そっか。 俺たちは互いに努力して願いを叶えればいいんだよな?」
「うむ、その通りなのだ!」
やられた……
俺は一生こいつに勝てない気がするぞ。
森羅の語る言葉にぐぅの音も出ない。
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