第1章/列島の異変

10/16
前へ
/95ページ
次へ
「やだなあ、遠藤博士。前に会った時とあまり変わってませんよ」 「そうか。まあ、確かにそうかもな……」 遠藤はそう言い、ガハハハと笑った。 「ところで、小野田君」 ひとしきり笑い終えると、遠藤は真剣な表情になって、こう続けた。 「……君は、今回の事、どう思う?」 「島が沈んたことですか?」 「うん」 暫く考えてから、小野田はこう言った。 「そうだな……。小さな無人島1つ沈めるのなんて、神様が決めてやることだ。人間がどう動こうと、自然に歯向かうことは、神様を怒らせるだけ。でも、それをどうにかしなければ、我々がほろびる。――神様を取るか、我々の命を取るか。その選択が難しくなる。 でも、当然日本人――いや、人類には生きる権利がある。だから、いつか神の怒りも収まるだろうさ」 「そうか。そう。我々人類にも生きる権利はある。だからと言って、自然を破壊し続け、神様を怒らせるような事をしてはならない。――地球と共存するには、開発も必要だけど、自然を守ることもまた必要だ。無人島が沈んた事は、神様が我々の自然の破壊に対しての怒りの1つだろう。だけど、勿論地質的な理由がある。我々科学者の役目は、その原因を探すことだ」 遠藤は、そこまで一気に言うと、ふうっと息を吐いた。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加