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「よし。《レモラ》を出してくれ、小野田君」
小野田は、《レモラ》を出すために、射出レバーを出して、引いた。すると、《しんかい》の船底が開き、中から深海探査機が三機、出た。
「よし。小野田君。下に――日本海溝の底に、《レモラ》の車輪を着底させてくれ。――何があろうと恐れずに、だ」
「は……?何度もやっていることですから、容易なことですよ」
小野田は気楽にそう言いながら、《レモラ》の車輪を着底しようとした。しかし……。
「な、何だこれは!《レモラ》が、海底より下に――!先生、一体何なんですか!」
3Dで示された外の様子を見ながら、霧島が唸った。
「霧島。これは、海底ではない」
落ち着いた声で、遠藤は言った。
「密度……1・055。海水密度の最大値を大きく上回っている。それにこれは……大量の…重金属イオンの成分……。そうか。密度飛躍層(みつどひやくそう)か!」
「しかも先生!これは明らかにDSL(深部散乱層[しんぶさんらんそう])……ディープスキャッタリングレイヤーです!」
海底のように見えて海底ではない場所……そんな物がこの世の中に……。
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