第1章/列島の異変

14/16
前へ
/95ページ
次へ
「よし。《レモラ》を出してくれ、小野田君」 小野田は、《レモラ》を出すために、射出レバーを出して、引いた。すると、《しんかい》の船底が開き、中から深海探査機(レモラ)が三機、出た。 「よし。小野田君。下に――日本海溝の底に、《レモラ》の車輪を着底させてくれ。――何があろうと恐れずに、だ」 「は……?何度もやっていることですから、容易なことですよ」 小野田は気楽にそう言いながら、《レモラ》の車輪を着底しようとした。しかし……。 「な、何だこれは!《レモラ》が、海底より下に――!先生、一体何なんですか!」 3Dで示された外の様子を見ながら、霧島が唸った。 「霧島。これは、海底ではない」 落ち着いた声で、遠藤は言った。 「密度……1・055。海水密度の最大値を大きく上回っている。それにこれは……大量の…重金属イオンの成分……。そうか。密度飛躍層(みつどひやくそう)か!」 「しかも先生!これは明らかにDSL(深部散乱層[しんぶさんらんそう])……ディープスキャッタリングレイヤーです!」 海底のように見えて海底ではない場所……そんな物がこの世の中に……。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加