プロローグ/博多大震災

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その日――2015年8月7日の博多は、目が眩むような快晴で1日がスタートした。 加藤は、そんな博多の街を、汗だくになりながら歩いていた。アスファルトの路上からはユラユラと陽炎が立ち上り、直上からは真夏の太陽が、ギラギラと照り付けて、肌を焼いていた。 喉が、水分を求めて悲鳴を上げていた。ヒリヒリするほど、渇きを訴えている。 「あっち~」 思わず情けない声を、加藤は洩らした。ふらふらとした足取りで、自動販売機の方に歩を進める。ワイシャツは、既に汗でグショグショだった。 スポーツドリンクのボタンを押し、中からペットボトルを取り出す。すぐにペットボトルの蓋を開けると、一気にそれを飲み干した。 ペットボトルを屑籠(くずかご)に入れ、腕時計を確認する。――午前、10時26分だった。腕時計のディスプレイには、確かにそう表示してあった。
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