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「なんだ、海底潮流か?」
「いえ、地震のようです」
ゴンゴンゴンと、さらに激しく《しんかい》が揺れた。
「浮上します。捕まってて!」ぐぐぐっ。一気にレバーを押し上げ、《しんかい》は異変が起きていた日本海溝を後にした。
「これはまた、ひどいありさまですな……」
橋本船長が、傷付き、ぼろぼろになった《しんかい》を見上げながら言った。時刻は午後6時21分。太陽は既に没し、暗闇が広がっていた。《しんかい》は、《勝鬨丸》のライトに照らされていた。
「お疲れ、小野田君」
遠藤、霧島に続いて降りてきた小野田に、橋本はそう声をかけた。
「お疲れっす、船長」
「どうしたというんだね、一体……」
「それは、陸(おか)で後程……」
憔悴しきった声で、小野田は答えた。――船は、東京への帰路に就いた。
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