第2章/東京の惨事

2/17
前へ
/95ページ
次へ
12月20日 翌日。クリスマスが近づき、街は活気づいていた。商店街を歩けば、そこらじゅうからクリスマスソングが聞こえてきて、気分を盛り上げさせる。 時刻は、午前10時32分だった。相変わらず、真冬の弱々しい日光が東京の街に降り注いでいる。吐く息は白く、震えるほど寒い。 遠藤は、身を縮めながら『遠藤地球物理学研究所』の中に入った。中は暖房が効いているため、格段に暖かい。 「あ、先生。お疲れ様です」 パソコンと研究の機材で埋まっている研究室に入った遠藤を確認すると、霧島は立ち上がって挨拶した。 「よう、霧島。外は相変わらず寒いなあ」 コートを椅子に掛けながら、遠藤はそう返した。 「ええ、先生。朝の最低気温、氷点下らしいっすよ」 そんな霧島の声を聞きながら、遠藤はノートパソコンの電源を入れた。そして、コートのポケットから携帯電話を取り出して、電話番号をプッシュした。 『はい、小野田ですが』 聞き覚えのある声が、すぐに返ってきた。昨日会ったばかりの、小野田の声だった。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加