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剣と魔法、人と魔物の共存する世界『エルディア』。その第二大陸である『グラス・オン』には国と言う概念が無い。
数ヵ所にある大都市がそれぞれの統治をし、貿易を行うことで成り立つ大陸である。
その大都市の内のひとつ『アイン』の郊外には、少々風変わりな便利屋があった。
事務所の名前は『NEMLESS』。既にこの時点で変わっている。なにせ『名無し』と言う意味なのだから。
とは言え、仕事が無い訳ではない。今日もNAMELESSのオーナーは、アイン近郊の森で依頼をこなしている。
「オォォラアァァ!!」
烈昂の気迫と共に放たれる拳撃が、飛び掛かってきたガルムと呼ばれる狼に似た魔物を 、一撃の元に叩き伏せた。
「うし。こんなもんかな」
彼が手の埃を払いながら呟いた。
―と。
「グルァアア!」
生き残っていたガルムが、彼の背後から襲い掛かってきた。しかし、
「おっと。いくら俺がいい男だからって、後ろから飛び付くのは無しだぜ」
彼はガルムの奇襲にしっかり反応し、更に喉元を右手で鷲掴みにしていた。
「まぁ、魔物に飛び付かれても嬉しくねェけどな!!」
彼は、苦しそうにもがくガルムを掴んだまま跳躍し、思いきり地面へ投げ飛ばした。
軽く地響きをならして、ガルムの身体は地面に消えた。
「終わったか?」
着地した彼は、腰に両手を当てて周囲を見回した。ガルムの影はもう見えない。これにて依頼達成である。
ところが、事務所へ帰ろうとした彼を、ひとつの影が襲った。
「…おいおい。聞いてねェぞ?」
攻撃を回避した彼は、うんざりしながらぼやいた。
彼の目の前には、体勢を低くした、ガルムより二回り程大きい体格をした魔物がいる。唸り声を上げているところから、戦闘準備は万端のようだ。
「ガルムリーダーだよまったく…。報酬上乗せだな」
彼はそう言うと、右拳を振り上げ、ガルムリーダーへダッシュしていった。
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