異世界

7/9
前へ
/170ページ
次へ
翌朝…   ~♪~♪~♪   軽快な音楽が紗夜のポケットから鳴る。その音にビビる浅葱。   『お…お前の腹から、変な音が鳴ってるぞ!?』   『ん…?携帯!?』   がばっと起き上がり、制服のポケットから、いそいそと携帯電話を取り出す紗夜。   『なんだよ…それ!?』   浅葱を無視して、携帯を開く。一つの望みが芽生えたと思ったが…携帯は虚しくも“圏外”を指す。目覚ましの音楽を消して、肩を落とす。   『はぁ…やっぱり駄目かぁ…』  ガッカリする、紗夜。 後ろから浅葱が指差して言う。   『だからなんだよ、それ…』   恐る恐る、近寄る浅葱…。   『これ…携帯電話。私達の連絡手段なんだよ。でも…ここじゃ使えない。』   『へぇ…変なもん、持ってるなぁ…』   携帯電話をマジマジと見つめる浅葱に、紗夜は   『今日、行くんだよね?先読み姫様の所に…』   『あぁ…まぁ、一日くらい歩いて着くから大丈夫だ。』   『いっ…一日もぉ!?そんなに歩くの!?』   驚く紗夜に浅葱は   『馬が無いから仕方ないだろ。ったく…世話の妬ける奴だな…早く、自分の家に帰りたかったら、文句言わねぇの!』   渋々、浅葱に返事を返す紗夜。   『はぁ~い…』         浅葱は、紗夜姿を見て言う。   『その服装…目立つなぁ…。まぁ…町に着いたら、考えよう。』   『いいよ…、制服で。』           先読み姫の住む都町まで、歩く二人。どれくらい、歩いただろう…紗夜は、ふとある事に気が付いた…   (浅葱…、歩くペースを私に合わせてる?)   紗夜は先に進む浅葱の背中を見つめた。    (私の事に巻き込んでるけど…浅葱、大丈夫なんだろうか…浅葱にも家族がある訳だし…無理に付き合わせてるんじゃないのかなぁ…)   『なぁ~に考えてんだぁ?』   浅葱が絶妙なタイミングで話かける。急に、変な事聞く浅葱に、どもる紗夜。   『えっ!?あっ…なっ…何でもないよ。』   紗夜を背に向けて、浅葱は言う。   『考えてたの…家の事か?…心配すんなって、絶対に家に帰れるさ。』   『浅葱…うん。ありがとうね。』   浅葱の優しさが身に染みた。   (これ以上、浅葱に迷惑はかけれない…)    
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加