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翌朝…
~♪~♪~♪
軽快な音楽が紗夜のポケットから鳴る。その音にビビる浅葱。
『お…お前の腹から、変な音が鳴ってるぞ!?』
『ん…?携帯!?』
がばっと起き上がり、制服のポケットから、いそいそと携帯電話を取り出す紗夜。
『なんだよ…それ!?』
浅葱を無視して、携帯を開く。一つの望みが芽生えたと思ったが…携帯は虚しくも“圏外”を指す。目覚ましの音楽を消して、肩を落とす。
『はぁ…やっぱり駄目かぁ…』
ガッカリする、紗夜。
後ろから浅葱が指差して言う。
『だからなんだよ、それ…』
恐る恐る、近寄る浅葱…。
『これ…携帯電話。私達の連絡手段なんだよ。でも…ここじゃ使えない。』
『へぇ…変なもん、持ってるなぁ…』
携帯電話をマジマジと見つめる浅葱に、紗夜は
『今日、行くんだよね?先読み姫様の所に…』
『あぁ…まぁ、一日くらい歩いて着くから大丈夫だ。』
『いっ…一日もぉ!?そんなに歩くの!?』
驚く紗夜に浅葱は
『馬が無いから仕方ないだろ。ったく…世話の妬ける奴だな…早く、自分の家に帰りたかったら、文句言わねぇの!』
渋々、浅葱に返事を返す紗夜。
『はぁ~い…』
浅葱は、紗夜姿を見て言う。
『その服装…目立つなぁ…。まぁ…町に着いたら、考えよう。』
『いいよ…、制服で。』
先読み姫の住む都町まで、歩く二人。どれくらい、歩いただろう…紗夜は、ふとある事に気が付いた…
(浅葱…、歩くペースを私に合わせてる?)
紗夜は先に進む浅葱の背中を見つめた。
(私の事に巻き込んでるけど…浅葱、大丈夫なんだろうか…浅葱にも家族がある訳だし…無理に付き合わせてるんじゃないのかなぁ…)
『なぁ~に考えてんだぁ?』
浅葱が絶妙なタイミングで話かける。急に、変な事聞く浅葱に、どもる紗夜。
『えっ!?あっ…なっ…何でもないよ。』
紗夜を背に向けて、浅葱は言う。
『考えてたの…家の事か?…心配すんなって、絶対に家に帰れるさ。』
『浅葱…うん。ありがとうね。』
浅葱の優しさが身に染みた。
(これ以上、浅葱に迷惑はかけれない…)
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